階段下のがらくた部屋

ハリー・ポッターの感想・考察から日々の雑事まで。だったのが色々あって将棋とか。

スポンサーサイト  

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

category: スポンサー広告

tb: --   cm: --

死闘決着 ―第60期王座戦第4局―  

死闘決着

8/29から開幕した第60期王座戦が、10/3の第4局をもってついに幕を閉じました。
第3局までの大まかな流れを振り返ると…
(名前が前のほうが先手。丸印は勝敗)
第1局:●羽生-渡辺○(矢倉対急戦矢倉の戦型で、渡辺王座の逆転勝ち)
第2局:●渡辺-羽生○(羽生二冠が意表の角交換四間飛車から仕掛けるも、序盤作戦負けからの逆転勝ち)
第3局:○羽生-渡辺●(第1局と同じ矢倉対急戦矢倉の戦型から。羽生二冠の大局観が光り完勝。)

と、羽生二冠にとっては王座奪還に王手をかけての、
渡辺王座・竜王にとっては初の王座防衛をカド番に追い込まれての第4局となりました。

当日は棋譜中継中継ブログニコ生中継によって
朝9時の対局開始から完全生中継の態勢。
王座戦は持ち時間各5時間で、お昼と夕食の休憩が各1時間挟まります。
が、平日で当然仕事があるため、始業前にちょこっとと、
お昼休みと、あとは残業の休憩中やらを経て終業後にやっと観戦…しかないのが悲しいところ。

まずいきなりの衝撃が後手羽生二冠の二手目、3二飛。
羽生二冠はオールラウンダーとはいえ、二手目に3二飛というのは見ている人全員の度肝を抜きました。
ど、どうなるの!?と思いつつ、私は仕事へ…

そして21時ちょっと前。
仕事が予定よりは早めに終わって棋譜&ツイッターチェック!!
局面は最終盤。
羽生二冠が優勢に進めていたらしいのが、なにやら不穏な雰囲気が漂い始めていたところでした。
持ち時間も少なくなってきていて、電車に乗っている間に終局、なんてイヤだ!ということで
駅のホームで棋譜&twitter観戦。
twitterではたくさんの将棋ファンのほか、プロ棋士の方々や色々な見解が見られます。
(ニコ生はwi-fiの入らない環境でiPhoneで見るのは厳しい…)

もちろん私はプロの丁寧な解説がないと、
盤上で何が起こっているのかさっぱりわからないわけですが
そのプロの方々が口をそろえて「さっぱりわからない」と…

どうしていいかわからず(いや、どうにもなりませんが)、
とりあえず電車に乗って帰路につきつつ電波が復活するたびに棋譜を更新することに。

そして局面は進み、羽生二冠が攻めるものの渡辺陣に攻めが届かず、
これは逆転で先手勝ちか…??
まさかフルセットに持ち込まれてしまうのか…!?

と、誰もが思ったその瞬間。

羽生二冠が指したのが122手目、6六銀

はじめ棋譜コメントには控え室で検討するプロ棋士の方々の

「え」
「え?」

というコメントしか表示されていなくて、私には何が起こったのかまったくわからず、
すぐさま思わず電車を降りました。地元駅まではあと2駅というところ。

控え室や現地大盤解説、ニコ生解説、それぞれで検討する棋士たち、
そして対戦者である渡辺王座・竜王の誰にも見えていなかった一手が指されたのでした。
しかもそれが、相手からの攻撃をかわして尚且つ相手陣への攻撃にもなっている一手。

渡辺王座・竜王にしてみれば一瞬勝機が見えたと思ったら、ズガンととんでもない手が飛んできた…しかも最終盤の残り時間が逼迫している局面で。
そんな感じでしょう…
これぞ羽生マジックの炸裂…といった風情です。

この6六銀から以下こう着状態が続く「千日手※」となり、即日指し直しが決定。
(※千日手…せんにちて。お互いが状況を打開できなくて同じ局面を4回繰り返すと千日手となり、手番の先後を入れ替えて指し直しとなる。)
お互いがお互いの喉元に刃で触れていながら、双方が首の皮一枚でしのぎ切って、とうとう決着がつきませんでした。
まさに頂上決戦。死闘と呼ぶにふさわしい。

朝9時から始まって22時過ぎ、13時間に及ぶ激闘の末まさかの指し直し…

指し直し局が始まったのが22:39。
持ち時間は渡辺3分、羽生4分だったところで、少ないほうが1時間になるように調整され、
そして先手と後手を入れ替えて
羽生(持ち時間1時間1分)-渡辺(持ち時間1時間)で指し直し局がスタート

戦型は二人に因縁の深い、矢倉模様へ。
とはいえ、1局目・3局目のような渡辺王座・竜王の得意な急戦矢倉にはならず、相矢倉と呼ばれるカタチへ。

じわじわ、じわじわと後手陣を圧迫していく羽生二冠…
しかし、相手が渡辺王座・竜王であるからには見ているこちらもまったく気が休まりません。
そして時刻は午前2時近く。
9時から始まって実に17時間が経とうというところで、羽生二冠が優勢から勝勢へ。

最終盤、もう、解説の検討陣も検討を打ち切ってただモニターに映る対局者を見守る。
後手の渡辺玉はもう風前の灯なうえ、対する羽生玉は堅牢な囲いの中。
先手の攻めも続き、万事休すという状況の中、
ひとり、孤高に、それでも投了せず最善手を尽くす渡辺王座・竜王。
この一局を落とせば自身初のタイトル失冠。
しかも前期奪った相手から奪い返される。

第2局の羽生二冠の振り飛車から流れが変わったようにも見えましたが、
私には第1局で先手番での逆転負けを喫したことで、羽生二冠がなにかふっきれたように感じました。
後手番での振り飛車は当初からの作戦だったのかもしれませんが、
第2局以降対渡辺戦での無用な力みのようなものがなくなったような…
そして渡辺王座のほうは、失冠のプレッシャーに押され、強気で積極的な手がでない…そんなふうに見えました。

…というのはたかだか将棋ファン暦半年の初心者の戯言とお聞き流しください。

一手一手指していっても絶望しかない中、誰もが固唾を飲んで見守るその視線の先で
渡辺王座は何を思って指していたのでしょう…
その姿には、竜王8期を守る永世竜王としてのプライド、これまでタイトルを失冠したことがないという自負、
そして将棋に正面から誠実に向き合う真摯な姿勢が、鮮烈に、美しく映し出されていました。

たった半年ですが将棋を観戦してきて、
大きな勝負での決着がつくとき、印象に強く残るのは、
勝った側ではなくてむしろ敗者のほうでした。

名人戦第2局の森内名人、名人戦第5局の羽生二冠、そして今回の渡辺王座・竜王。
自身の負けを誰よりも知りながら、それでも投げず、投げられず、
最後の最後まで最善を尽くすその姿は、美しい、としか表現のしようがありません。

時刻は午前2時をまわり、開始から17時間強が経ちました。
そしてとうとう147手、千日手局を合わせて実に289手のすえ、渡辺明王座・竜王投了。
昨年奪われた王座を奪還し、羽生二冠は三冠へと見事な返り咲きを決めました。
これにて羽生三冠は自身の持つ総タイトル獲得数記録を83期に伸ばし、
王座通算20期、来期の同一タイトル連続登場22期確定という
3つの記録を新たに塗り替えることに。

私はすっかり羽生さんのファンなので、王座奪還にもちろん喜んでいるのですが
終局直後は言葉にならず、両対局者双方への敬意もあって、素直に喜べない、という不思議な心境でした。

将棋は二人で指すゲームなので、一人では名局は生まれません。
二人が現代将棋界の最高峰だからこそ生まれえた今回の名勝負、
リアルタイムで観戦できたことを大変光栄に思います。
スポンサーサイト

category: 将棋

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://greeny.blog7.fc2.com/tb.php/373-31e5e7e0
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。