階段下のがらくた部屋

ハリー・ポッターの感想・考察から日々の雑事まで。だったのが色々あって将棋とか。

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第71期順位戦 A級8回戦  

「棋士」と呼ばれる将棋のプロは現在約160人(※女流棋士はまた別。ここでは説明を省きます)ほど。
プロの棋士を目指す人は奨励会というところに所属して戦って勝ち星を積み重ねて
四段に昇段すると晴れてプロ棋士となることができます。
その人数は年間4人。(※例外もある)

プロ棋士とはもちろん将棋を指して収入を得る職業です。
各スポンサーによって色々な棋戦が組まれ、それぞれ予選などがありますが
やはりその一番の基本となる戦いは、順位戦と呼ばれる戦いでしょう。

順位戦は名人を頂点としたヒエラルキー。
その名のとおりプロ棋士の序列を争う、地位と名誉をかけた争いでもあります。

junisen.gif

図はその順位戦(名人戦)のピラミッドを示したものです。
名人を頂点に上からA級、B級1組、B級2組、C級1組、C級2組と5クラスあります。
四段に昇段してプロ棋士となると一番下のC級2組に所属し、
成績の良い者は上へ上がり、逆は下がっていくという弱肉強食の世界。

一番下のC級2組で成績が振るわずに降級点を3回取ってしまうと
順位のないフリークラスへ行くことになります。
降級してフリークラスに行った場合、
そののち一定期間内に規定どおりの成績を収めないと引退という、本当に厳しい世界です。

そんな順位戦の一番の華は、なんといっても名人への挑戦権を争うA級。
A級になれるのはC級2組から勝ち上がって、
鬼の棲家と呼ばれるB級1組を上位2位までの成績を収めることのできた一流プロ棋士だけ。
トップ10人の総当りによる苛烈な戦いが1年間繰り広げられ、
そこで1位の成績を収めた者が、晴れて名人への挑戦権を獲得します。

A級棋士といえども下位2名は下のクラスに陥落してしまいます。
超一流棋士のひしめくA級ですので誰が落ちても不思議はありません。
今期のA級を見ても、今期初めてA級にあがった橋本八段以外は
全員がタイトル保持者もしくはタイトル獲得経験者。
たとえ現役タイトルホルダーでもまったく気の抜けない厳しさです。

年度末が近づいてくるとその順位戦もいよいよ佳境。
名人への挑戦権がかかる戦いと、残留をかける戦いとでデッドヒートが繰り広げられます。

前置きが長くなりましたが、2月1日はそのA級順位戦8回戦の一斉対局が行われ、
現地である将棋会館での大盤解説会に行ってきました!

望外にも仕事が定時で上がれたので、急いで将棋会館のある千駄ヶ谷へ。
大盤解説会開始からすこし経ったあたりで到着したのに、
会場は立ち見もすぐにいっぱいになってしまったほどの満員具合!!
注目度の高さがうかがえます。
私は当然立ち見です。

行方尚史八段木村一基八段に加えて中村修九段飯島栄治七段が飛び入り参加されて
軽妙なトークを交えた解説で場は大盛り上がり。

今回8回戦を迎えた時点でのA級順位戦の状況は、下記の表のとおり。


順位氏名段位勝ち数負け数状況
1羽生善治三冠61自力での挑戦の目あり。暫定首位
2渡辺明竜王52自力での挑戦の目あり
3三浦弘行八段52プレーオフでの挑戦の目あり
5屋敷伸之九段43プレーオフでの挑戦の目あり
6郷田真隆棋王43プレーオフでの挑戦の目あり
7佐藤康光王将34降級の目あり
10深浦康市九段34降級の目あり
4谷川浩二九段25降級の目あり
8高橋道雄九段25降級の目あり
9橋本崇載八段16降級の目あり。暫定最下位


表は今期の成績順です。
順位とは前期の成績による順位。
(挑戦権に順位は関係しませんが、降級の場合に成績が同じ人が3人以上だと成績下位から陥落します。)

A級順位戦8回戦の組み合わせは以下のとおり。

▲羽生 善治三冠(6勝1敗)-△渡辺 明竜王(5勝2敗)
▲三浦 弘行八段(5勝2敗)-△深浦 康市九段(3勝4敗)
△屋敷 伸之九段(4勝3敗)-▲佐藤 康光王将(3勝4敗)
▲郷田 真隆棋王(4勝3敗)-△高橋 道雄九段(2勝5敗)
▲谷川 浩司九段(2勝5敗)-△橋本 崇載八段(1勝6敗)

暫定1位の羽生三冠と星ひとつの差で追いかける2位渡辺竜王の直接対決が今回の大一番!
羽生三冠が勝って同率2位の三浦八段が負けると、9回戦を残して羽生三冠が挑戦者に決定。

逆に羽生三冠が負けると最大5人によるプレーオフの可能性が!
ほかも降級がかかっていたりと好カードばかりが並ぶ一斉対局ですが、
私の一番の興味はもちろん羽生三冠vs渡辺竜王です。

解説を聞きつつ、将棋連盟モバイル名人戦棋譜速報で羽生渡辺戦の棋譜をチェック…。

今回は後手の渡辺竜王が、最近まったく採用していなかった作戦で意表をついた作戦に、
羽生三冠が相手の狙いをはずすためか、あえて先手が勝った例のない展開を選択。
戦型の性質上激しい戦いになり、渡辺竜王に好手が出て渡辺竜王有利と見られていました。

はらはらして、気が気ではありません…

ただ、渡辺竜王が指している相手は羽生三冠。
検討陣の予想になかった手が連発。
形勢は不明となって最終盤へ…

形勢は二転三転。
午前0時をまわって、しかしこれは後手勝ちの順ではないか?と思われたところで
渡辺竜王の指した手は相手の竜をどかして自陣を守る一手。
直前に指された先手の7七銀を後手が同歩成りとすれば後手勝ちという検討がされていたので
一同騒然。

最後まで難しいながらもこれで後手の勝ちがなくなって0時46分、渡辺竜王投了。

正直言って羽生三冠の負けだと思ってました。もう何がなんだか。
最終盤は他の対局の解説を聞きつつも携帯中継で羽生渡辺戦が気になって気になって、
ずっとはらはらドキドキしっぱなし。

終始難しい将棋だったものの、解説の先生方もやはり一番の疑問は
7七銀に同歩成としなかったのは何故か?という点でした。

そしてここで思わぬサプライズ…
なんと、対局を終えた直後の両対局者が、大盤解説会に登場…!!!!!
20年間この大盤解説会に通っている方も「こんなことは初めて」ということです。

対局が終った順に郷田真隆棋王と高橋道雄九段、佐藤康光王将と屋敷伸之九段の登場…
本当に直後、です。
朝10時から始まって深夜までの激闘を終えたばかりで、
頭のCPUが高速回転したままの、戦闘モードから抜けきらない、
「将棋を指す生き物」から人間に戻ってきていない状態のプロ棋士の姿がそこにありました。

大変貴重な機会で身に余る光栄です…
正直言って、畏れ多いです…
しかし(真剣じゃない勝負はありませんが)状況の煮詰まってきた順位戦は本当に本当に真剣勝負。
その対局直後にファンの前に姿を見せるというのは、ちょっとこう、見ているこちらがいたたまれない気持ちになります。
それに戦闘モードの棋士の迫力ときたら、すさまじいです。
ウサギの群れに突然姿を現した二頭の虎、という風情です。
棋士の先生方は淡々と、落ち着いてコメントされますが、そのあふれ出る気迫には完全に萎縮します。

3番目に終局した羽生渡辺両対局者も、まさか会場に…?と
大逆転の余韻の残る会場は、ドアが開くたびにざわめき、緊張が走ります。

すると、本当にいらっしゃいました…。

名人挑戦のかかった大一番。
しかも現在の棋界最高カード。
42歳の羽生三冠に対して、羽生三冠を相手に失冠した王座戦から数えて竜王戦(防衛、9連覇)、王将戦(挑戦中、2連勝)、棋王戦(挑戦中)とタイトル戦4連続出場中の28歳の渡辺竜王。
これに続いて次の名人の挑戦権が誰の手に渡るのか、というのはとても重要な意味を持ってきます。

その大一番が大逆転で終ったその直後。
しかも両者もう持ち時間もなく最後の最後は秒読みだったはずです。

その直後にファンの前に姿を現したお二人。
会場に登場した瞬間、場の空気が張り詰めました。

私も背筋を伸ばし、息を潜めてお二人を見つめます。

誰もが声を発するのをためらわれる雰囲気の中、解説の木村八段が、いつもの鋭い舌鋒の影もない、ためらいがちな調子で問いかけました。


「7七銀に同歩成では、後手玉は詰んでいたんでしょうか…?」

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

対局者お二人と、その場にいた全員が、凍りつきました。
長い沈黙が続き、(おそらく場の空気をファンのためにどうにかしようと)木村八段がかなりひかえめな口調で
「…まあ、そんな手も、あったと…いう、感じです…かね…?」


渡辺竜王
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………詰まないん、ですね…………………………………」

羽生三冠
「……………………………………………………………じゃあ、後手勝ちだったと、いうことですか………………………………………他に指しようもなかったですし……………………………………」

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

…そのあと、誰がどんな言葉を発したのか、覚えていません…
とにかく、痛いほどの沈黙が場を包み、氷のように張り詰めた空気で支配されていました。

お二人が対局室に戻られ、ドアが閉じられた瞬間、
呼吸をするのを思い出した、という感じで私はおもわず大きなため息をつきました。
そしてどよめく会場…解説の行方八段も木村八段も、動揺していたように思います。

つまりは、
7七銀に同歩と取ると、後手の玉が詰む(先手勝ちになる)と
両対局者が同じ勘違いをしていた、と。
まったくなんというドラマなんでしょう…

そのあと最後に終局した三浦弘行八段と深浦康市九段もご登場。
やはり緊張して居住まいを正しましたが、頭は羽生渡辺戦の劇的な幕切れでいっぱいで
そのあとのことは何も頭に入りませんでした。


A級8回戦が終っての状況は以下のとおり。

順位氏名段位勝ち数負け数状況
1羽生善治三冠71自力での挑戦の目あり。暫定首位
3三浦弘行八段62プレーオフでの挑戦の目あり
2渡辺明竜王53挑戦の目なし
6郷田真隆棋王53挑戦の目なし
5屋敷伸之九段44挑戦の目なし
7佐藤康光王将44残留決定
10深浦康市九段35降級の目あり
4谷川浩二九段26降級の目あり
8高橋道雄九段26降級の目あり
9橋本崇載八段26降級の目あり。暫定最下位


8回戦では挑戦も降級も1つも決まることなく、すべての結果は3月1日の最終戦
”将棋界の一番長い日”と呼ばれるA級順位戦9回戦へと持ち越されました。
最高に盛り上がること間違いなしです!!!
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category: 将棋

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コメント

初めまして

初めまして。
お疲れさまでした(^-^)/
この感想戦は、どなたが言い出したんでしょうね?
谷川会長のアイデアかな?
この感想戦、誰か動画撮影されてないかな?
写真撮影されている方はいらっしゃってTwitterにアップされてますが。
すっごい貴重なシーンですからねぇ。
生で見たかったです。
3月1日は、谷川会長を全力応援します(笑)

URL | yano #.n./8Eg2
2013/02/03 10:23 | edit

yanoさんコメントありがとうございます。
一応事前に対局者には打診してあったみたいですが、解説の先生方は知らなかったようで、大盤解説場は騒然でした。
写真はツイッター支部(http://kifu.exblog.jp/)の方が掲載してくださってますね。
いやあ、場の緊張感が半端ではありませんでしたので…3/1はもちろん、今年は他の順位戦ラス前も同じようにやる!とのことなので、機会があったら現地に是非いらしてみてはいかがでしょうか(^^)

URL | もりやん #1wIl0x2Y
2013/02/03 20:07 | edit

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