階段下のがらくた部屋

ハリー・ポッターの感想・考察から日々の雑事まで。だったのが色々あって将棋とか。

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第61期王座戦五番勝負、閉幕  

昨年の棋聖戦に続いて今期第61期王座戦に舞台を変えて再度の挑戦となった
中村太地六段を相手に迎えての第61期王座戦は
フルセットの熱戦となり3勝2敗1千日手にて、
羽生王座の防衛という結果で幕を閉じました。



前回の記事からまた日にちが開いてしまったのは
番勝負途中、しかもきわどい状況での感想が書きづらいからです。

前回記事にも表れていましたが、中村六段を相手に迎えての今期の王座戦は
かなり大変な番勝負になるのではないかと思っていました。

挑決トーナメントで破ってきた錚々たる面々もさることながら
やはり挑戦者決定戦での郷田九段を相手にしての壮絶な殴り合いを制しての挑戦決定
かなりのインパクトがありました。

そしてなにより、中村六段は25歳。若い。
若さの勢いというのは、予想もつかない結果を引き起こすものです。

王座戦が始まるまでの通算成績は羽生三冠の5戦全勝だったわけですが
前回の記事に書いたとおり、1勝されたらどうなるかわからないと本当に感じていました。
だから、第一局の勝敗はとても大事だと思っていたのです。


■9月4日 第61期王座戦五番勝負 第1局

第一局の時期にちょうど夏休みをとれて、旅行を兼ねて王座戦第一局の現地観戦に。
宮城県仙台市で開催された第一局。
泊りでの現地観戦遠征はこれが初めてです。

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松島瑞巌寺で羽生王座防衛祈願の絵馬

松島
9月4日当日の朝、松島にて。


前日を日本三景の松島で過ごし、第一局当日に対局会場のホテルに移動しました。
大盤解説会場は正面に盤面の映像がどーーーんとあって…
対局者の映像がなく…対局者の映像がなく…対局者の映像がなく…(大事なことなので3回言いました)。
観戦に対局室映像はとても大事なので、その辺お願いいたします本当に…!

第一局は挑戦者中村六段の先手で後手羽生王座の一手損角換わり。
もつれにもつれ大熱戦になりましたが、中村六段先勝。
対羽生戦初勝利でした。
0勝と1勝とでは勝ち星1つの差といえど、まったく意味が違ってきます。
それが番勝負の第一局ともなればなおのこと。

私は打ちひしがれて宮城を後にしました…


それと、第一局で気づいたことがひとつ。
王座戦のPVが”中村六段のPV”であったように、現地大盤解説でも、そしてモバイル中継での解説コメントでも、
どこか、なにか、若手による新時代を期待する空気が
何気なく、しかしはっきりと漂っていました…。

現地解説でも
佐藤康先生「解説会に女性が増えましたね」
鈴木女流「羽生先生の応援でしょうか」
佐藤康先生「いや、中村六段でしょう(きっぱり)」

というやりとりに最前列で見ていた私は正直ムッとしましたよ…………。


それでもその時点ではその程度だったのですが、
自分のtwitterのタイムライン上でも中村六段応援の勢力が強くて
自分がフォローしている人たちで構成されているタイムラインだというのに
とてつもないアウェイ感で、twitterをとても見ていられないような有様でした。


■9月18日 第61期王座戦五番勝負 第2局

第二局は羽生王座の先手。
中村六段が公式戦で3度目という二手目△8四歩から、なんと矢倉模様へ。
後手急戦矢倉から持久戦になり、というか手の殺し合いから超持久戦になり、
夕食休憩後に羽生王座が穴熊に潜る展開に。

王位戦第五局をちょっと思い出しましたが、その後開戦してから突然激しくなりました。
1~3筋で戦いが始まって、しかし後手の中村玉が上部脱出を図る展開。
先手は穴熊で堅くはあるものの、王様は身動きが取れず、
駒も穴熊を構成するために偏っています。
すなわち後手に入玉されてしまったらほぼおしまいです。

必死に入玉を阻止する羽生王座。
果敢な手で入玉を果たそうとする中村六段。

何度も先手の攻めは切れたのではないか、と解説されるたびに
心臓がぐっと圧迫されるような気持ちで最終盤の激闘を映し出すニコ生を
歯を食いしばりながら見守りました。

そしてとうとう中村玉が先手陣に到達、
しかしさすがの羽生王座、なんども途切れそうになる細い細い攻めを
技を尽くしてつなぎ、後手玉が5一に到達するも、
穴熊を構成していた金銀までもが攻撃に参加して、
なんとなんと、後手玉を押し返してしまいました…!!!
そして討ち取り激闘を制し、番勝負は一勝一敗の振り出しに。


第二局の直前にはA級順位戦の三浦九段戦で
電光石火の完勝を収めていた羽生三冠でしたが
どうも、今期の王座戦はなんというか…やりにくそうな感じに見えました。
なんていうか、語弊があるかもなんですけど、全然楽しそうじゃないというか。
前期の棋聖戦の時はタイトル初挑戦の中村六段ばかりが
対局者の羽生棋聖を意識しているように見えましたが
今回は羽生王座のほうが中村六段のことを意識していて
将棋以外のことに気が散っているように思えました。


■10月2日 第61期王座戦五番勝負 第3局

改めて三番勝負となって第3局。
中村六段先手で角換わりへ。
中村六段は攻め将棋。
採用する戦法からしても自ら積極的に主導権を握って
攻め勝つ棋風です。
第3局でも積極果敢に主導権を握りに行き、途中羽生王座もかなり迫りましたが
終始優位に局面を制していた中村六段の勝ち。
1勝2敗で羽生王座がカド番に立たされてしまいました。

”絶対に主導権を握ってやる!”という意志が指し手にみなぎる中村六段に対して
羽生王座も普段は主導権を握るのが好きな棋風なのにもかかわらず
今シリーズはどうもその気配が見えません…。

通算20期という”絶対王座”の羽生王座相手に
初タイトル獲得へ王手をかけた中村六段への周囲の応援はヒートアップするばかり。
「(20代の若手が羽生王座を破ることで)歴史が動くのではないか」という人も現れてきました。


もう、たまらなくて。
まるで皆がそれを望んでいるかのように
「中村新王座誕生か!?」と語られるのを聞くのに堪えられない。

そんなことない。自分は羽生王座防衛を望んでいる。
それをなんとかお伝えしたいという一心で、
4日後に名古屋で開催されるJT杯将棋日本シリーズ準決勝に行くことにしました。


■10月6日 JT杯将棋日本シリーズ準決勝

JT杯は公式戦ながら公開対局で行われ、
そしてなんと、勝者がお客さんを握手でお見送りしてくださるのです。

すでに8月24日に静岡で行われた佐藤康光九段との2回戦も現地に行き、
勝者である羽生三冠に握手していただいてました。
握手の時、一瞬ではありますが声をおかけできるんですけど…
そのときは緊張で何も言えず…
羽生三冠に「おつかれさまでした」と言われてしまうありさま。
おつかれさまは羽生三冠のほうですよー><
(222手という超長手数の大激戦だった)


名古屋でのJT杯準決勝の相手は今期棋聖戦の挑戦者だった渡辺竜王(王将・棋王)
もちろん羽生三冠が勝つ保障などどこにもありません。
信じて見守るのみです。

羽生三冠先手で始まったJT杯準決勝は相矢倉になり羽生三冠の快勝!
港湾にある広い展示会場をぐるり一周する長い長い列に並んで
どきどきしながら、でも言うと決めてきた言葉を
何度も心の中で反芻して自分の番を待ちます。

ひとりひとりの顔を見て笑顔で声をかけつつ握手をしていく羽生三冠。
とうとう自分の番に!!



もりやん「おめでとうございます」
羽生三冠「ありがとうございます」
もりやん「王座戦、応援してます!」
羽生三冠「あ、ありがとうございます」


最後、きゅっと、手を握りなおしてくださいました。




何の変哲もない言葉です。
でも、この一言を今このときにお伝えしたかった。

別に私の言葉が何かしらの影響を与えるなんてそんなこと思っていません。
でも、自己満足であっても、どうしてもお伝えしたかったのです。

お伝えできて、良かった。


■10月6日 第61期王座戦五番勝負 第4局

JT杯を終えて当日のうちに名古屋から帰京され、
また翌日には王座戦第4局の会場である新潟への移動となった羽生三冠。
いつもいつもいつもこんなスケジュールを20年以上も続けていることに、
驚嘆せざるを得ません…。

カド番となった羽生王座の先手で今シリーズ初の横歩取りへ。
中村六段は後手での主力戦法がこの横歩取り。
そして羽生王座は横歩取りで今期なんと負けなし。
この第4局の前までで6戦6勝0敗。

最近プロの間でさかんに指されている最新形へと向かっているようでした。
ところが、何か羽生三冠に誤算があったのか、中盤あたりで千日手※へ。
両者2時間以上残して先後を入れ替えて指し直しとなりました。
持ち時間は羽生王座のほうが19分短かいものの大した差ではないし、
まあ早指しは羽生三冠のほうが有利でしょうし
手番が後手になるのも私はそんなに気にしていなかったのですが…

「これは中村王座来たんじゃないか!?」
とにわかに盛り上がる将棋界隈。

これから指し直すというのに。
まだこれから勝負をするというのに。

※千日手…同一局面を4回繰り返すと千日手といって無勝負になって、先手と後手を入れ替えての指直しとなる。


■10月6日 第61期王座戦五番勝負 第4局 指直し局

千日手局から30分後、中村六段先手で始まった対局は
後手羽生三冠の再度の一手損角換わり。
中村六段の先手での主力戦法は角換わり。
このあたり「主導権は渡さない!」という王座の意思を感じます。

とはいえ角換わり系の将棋は後手の分があまりいい印象がありません。
羽生三冠の後手番の戦型別勝率でも、一番低いのが角換わり系の将棋です※。
(※参考、「玲瓏 羽生善治(棋士)データベース」戦型別対局成績


中盤羽生王座が中央で仕掛け、そこから激しい斬り合いに。
羽生王座が薄い先手陣に厳しく仕掛けたあと、攻守が入れ替わり
中村六段が端から後手陣に襲い掛かります。

攻め将棋の棋風に違うことなく激しく攻め立てる中村六段。
後手がしのぐか、先手が仕留めるか、という展開になりました。

盤面右上にいた後手の王様は左辺へ逃走し、そこからさらに中央へ。
これは詰んだんじゃ?いや、詰んでない。詰んだんじゃ?詰んでない。
と一手ごとに結論が変わる解説に翻弄され、
私はタオルを握りしめて震えながらニコニコ生放送の中継を見守っていました。

そして、なんと、打ち歩詰め(※)でとうとう先手の攻めから逃れた羽生王座。
返す刀で先手玉を討ち取ってカド番をきわどくしのぎ切りました。
※打ち歩詰め…持ち駒の歩を打って相手玉を詰ますのは反則というルール。

なんという劇的なラストでしょう。
しかし。しかし。しのぎ切りました。

あとから千日手局をニコニコ生放送のタイムシフト機能で見ましたが
この日の羽生三冠は、調子が”どしゃ降り”に見えました。
全然集中していないようで。
対局の結果をもう知っているのに、見ていて嫌なドキドキが止まりませんでした。


最終局までの約2週間、羽生三冠は渡辺明竜王との順位戦、郷田九段、谷川九段との王将リーグにも勝ち、
そして、運命の日はやってきました。


■10月21日 第61期王座戦五番勝負 第5局

JT杯準決勝から数えて強敵相手に5連勝中。
けっして調子が悪いわけではなさそうです。
なさそうなのですが…。

羽生三冠は以前から
「調子は天気のようなもの。その日になってみないとわからない」
と発言されています。

ふーん、そんなものかなあ、とはいっても、調子のいい時期悪い時期って、あるよね…
なんて思っていたのですが、今回の王座戦で
「調子は天気のようなもの。その日になってみないとわからない」んだなあというのが
よくわかったといいますか。
羽生三冠は「不調も3時間で回復する」などとも言われるのですが
もともとかなりの気分屋さんのように思えます。
気分屋さんは安定した結果を出すこととはかなり縁遠いのが普通ですが
悪くてもなんとかしてしまうのも羽生三冠。そんな気がします。

この日はとにかく、
「羽生三冠の調子のお天気が晴れでありますように、
晴れまで行かなくても、どしゃ降りではありませんように」
と祈っていました。

とても平静に仕事なんてできそうにないので
9月に休日出勤した分で午後半日代休をもらって
帰宅したのが午後15時。
各地で開催されている大盤解説会に行くという手段もありましたけども
今回のこのアウェイ感で満たされているかもしれない会場では
とても自分が耐えられる気がしませんでした。
家でニコ生で見守ろう、と決めていました。

ニコ生を見つつ中継ブログで朝からの様子を確認。
この日の羽生王座は今期王座戦五番勝負の中では一番目が輝いていたように見えました。

最終局は改めて振り駒で、羽生王座の先手。
千日手となった第四局と同じ横歩取りへ。
千日手は消化不良でしたし、両者得意な戦法での決着は雌雄を決するのにふさわしいですね。

羽生三冠が序盤で変わった工夫をし、力戦調の展開へ。
後手が全体的に盛り上がって圧迫をかけるのに対し、
先手は飛車を中央に旋回して守りの薄い中央からの突破を狙います。

途中は先手の飛車が捕まってしまいそうで、
後手のほうが良いのでは…?と見られていましたが
仕掛けのあたりで中村六段に失着があったようで、
戦いが本格的に始まった途端に一気に後手陣を崩壊に導く羽生三冠。

後手陣に攻め込む羽生三冠の表情は、棋聖戦の時に見られたような
獲物を見つけた獣のような眼をしていました。

あっという間に後手の王様を追い詰め、
最後は激しく華麗に後手玉を討ち取り、大熱戦だった五番勝負の幕を鮮やかに降ろしました。


本当に、本当に、本当に、良かった。
中村六段も本当に強かった。
でも、最後に「分厚い紙一重」を示してくださった羽生三冠、
本当に痺れました。


これにて羽生三冠は王座戦2連覇、通算21期で同一タイトル獲得数歴代単独一位、
そして自らの記録であるタイトル獲得通算記録を86期に塗り替えました。
名人奪取はなりませんでしたが今期4連続タイトル戦に出場し、
保持する3つのタイトルをすべて防衛されました。

祝・王座防衛!
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