階段下のがらくた部屋

ハリー・ポッターの感想・考察から日々の雑事まで。だったのが色々あって将棋とか。

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第63期王将戦第4局 ▲7九角の謎  

シリーズ成績を1勝2敗で迎えた第63期王将戦第四局羽生三冠の先手で
後手渡辺王将がゴキゲン中飛車という意表の戦型でした。

第63期王将戦第四局棋譜中継(要無料会員登録)

渡辺王将と言えば生粋の居飛車党の代表格。
つい4日前に王位リーグ佐藤康九段戦でも意表のゴキゲン中飛車を指していたので
予想できたといえばできたのですが、
羽生さんの先手番対振り飛車戦績は179局戦って勝率約8割。(玲瓏:羽生善治(棋士)データベース 戦型別対局成績より)
いわば、後手の振り飛車をもっとも退治してきた棋士と言えると思います。
対して渡辺王将の公式戦での中飛車経験は4日前の対局を含めて4局。
しかも4日前の対局では負けているのに…。
これは何か秘策があるのかそれとも…?と序盤から目が離せない展開となりました。

ゴキゲン中飛車対超速3七銀という、現在もっともよくある(らしい)対策で進んでいった序盤から
中央の利きが集まっている地点で戦いが始まったところで一日目終了。
先手がやや指しやすいかな?(でも互角)という雰囲気でした。

二日目に入っての中盤戦、激しくなる変化もありつつ渡辺王将がそれは選ばず穏やかに組み合う展開にしました。
このへんは「らしい」という気がします。
激しい変化と穏やかな変化、どちらもアリだとしたら渡辺王将は後者を選びがちですよね。
そこからじりじりと再度駒組みになりましたが、先手は進展の望めない格好なのに対して
後手は陣形をよくする手がいくらでもある形。

先手どうするのだろう、と思われたとき羽生さんが指したのが、まさかの▲7九角。
このブログでの観戦記には図面は使わないつもりでいたのですが、これは載せるしかありません。

1.png
50手目 △6五銀

図は問題の局面のちょっと前。
50手目に後手が持ち駒の銀を△6五銀と打って5六と7六の歩を狙ったところです。
どちらも大事な歩ですが、先手の羽生さんは5筋のほうが大事ということで▲5六金と守りました。
そのあと後手は△7六銀と歩を取り、先手は角道を止めるがやむを得ず▲7七歩と打ち、
後手は△8五銀と引いて、さて先手はどうするのかと思われたところで、55手目、先述の▲7九角。

55手目 ▲7九角
55手目 ▲7九角

後手の銀が8五にいるので9七から角を使うことができません。
でも7七を歩でふさいでしまったのでこのままここに置いておいても使い道がない。
でも、7九に引いても…図を見ると一目瞭然ですが、金が二重に角道をふさいでいて
角が攻撃に参加できそうな見込みが全くありません。

私のような初心者でも一目でそう思うし、プロの意見も同様…ということで
この▲7九角を見た時、「これは負けなんじゃないか…しかも相手は渡辺王将だし…」と絶望的な気分でした。


と こ ろ が


その後進んでみると信じられないことに、結果としてはこの角が働いて先手の羽生三冠が勝利を収めました。

83手目 ▲4二香成
83手目 ▲4二香成

図は感想戦で羽生さんが”まだはっきりとはしていないが、角を取ったところで良くなったと思った。”と語った局面。
83手目に羽生さんが▲4二香成と後手の角を取ったところです。

そしてさらに進んで103手目。

103手目 ▲3一竜
103手目 ▲3一竜


こちらは羽生さんが”竜で3一の金を取って勝ちだと思った”とした局面です。
将棋はここから多少の変化の余地はあるものの一直線で、後手が即詰みに討ち取られて111手で投了となりました。

111手目 ▲9四歩
111手目 ▲9四歩

投了図。

今まで見てきた限りだと、羽生さんは勝ちを完全に読み切ったところでしか「勝ちになったと思う」とは言わないし
はっきり優勢というか勝勢近くにならないと「良くなった」とは言わないイメージです。

それを思うと今回の「良くなった」はずいぶん早いような…。
解説では終盤もぎりぎりでずいぶん綾があったような感じを受けますが、
両対局者の局後のコメントを見ると、実はずいぶん前から形勢が先手に傾いていたのではないかという印象を受けました。

問題の▲7九角の場面はどうだったのか気になるところですが…
終局直後のインタビューで羽生さんはこの局面について問われ

「そうですね、ちょっとつまんない将棋にしてしまったかなあと思ったですねえ。なんか角がけっこう使いづらいんで、攻めづらい将棋にしてしまって」

というコメントでした。
羽生さんが時々言う「つまらない将棋にしてしまった」というのは
”先手で主導権を持って攻めて行きたいところなのに主導権を握り損ねてしまった”というような意味で言われることが多い気がします。
形勢を損ねた時には「悪くした」とはっきり言うので、
ここでは「悪くした」とは思っていないんじゃないか…??というのが私の印象なのですが…どうでしょう。
渡辺王将にしても、もっと早い段階で形勢を損ねた旨を言っていますし、
少なくとも対局者のお二人はこの▲7九角の局面で後手がいいとは思っていなかったのではないかなあ…と。

以下は所詮初心者の推測ですが…

△8五銀の局面で、このままゆっくりしていると後手にだけ好形に組まれてしまってまずい。
攻撃するしかないがこのままの陣形では戦えない。
角を9筋から使うめどは立たないし、8筋に置いておいても壁で邪魔なうえに攻めの目標にもなる。
ならば▲7九角として右辺の金を支えて右からの攻撃に備え、8筋に玉を逃げる余地を作ることで陣形を強化して攻めに転じよう。

…という意図だったのかなあと。
形は悪いけどこの局面での最善として選んだのかなあ…と。

恐ろしいのは結果的にそうなったということ。
どこまで想定内だったのかなあ…。



渡辺王将は並行して行われている第39時棋王戦でも三浦九段を挑戦者に迎えて
王将戦第4局の3日後に後手番を持って再度ゴキゲン中飛車を指しました。
超急戦と呼ばれるとても激しい展開で、結果は後手勝ち。
意表の3連投でついに勝利を収める結果となりました。

結局のところ王将戦第4局でゴキゲン中飛車を採用したのは、秘策があったというわけではなくて
後手番での戦法の幅を広げる意図が強いようです。
最近の羽生さんに関しての発言(強さの要因を取り入れたい旨など)や
有名騎手との対談で”自分の伸びしろ”について思うところがあったように見受けられたので
”目先の勝利よりも小さなリスクを取ることで先々を見据えた将来的な得を見る”という羽生流を試みているということなのかなと。
昨年度から2手目△3四歩からの横歩取りを解禁した(こちらも結果は出ていない)のも、そういうことなのだと思います。

”やってもやっても、結果が出ないからと諦めてしまうと、そこからの進歩は絶対にない。”というのも羽生さんの言葉です。
渡辺王将もしばらくは結果があまり伴わなかったとしても、この方針を基本的には貫いていくことでしょう。



というわけで(?)王将戦は2-2のイーブン!改めての三番勝負となりました。
また本局の結果を以て羽生-渡辺の対戦成績は29-28に。
羽生さんが渡辺王将に勝ち越すのは、2008年の竜王戦七番勝負で3連勝4連敗を喫して以来とのこと。
14歳も年下の相手に一度離されて追いついて、そしてついに追い抜きました。
番勝負もさることながらこのお二人の勝負はまだまだ続いていくとはいえ、これからも最も楽しみなカードのひとつですね(*´▽`*)
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