階段下のがらくた部屋

ハリー・ポッターの感想・考察から日々の雑事まで。だったのが色々あって将棋とか。

スポンサーサイト  

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

category: スポンサー広告

tb: --   cm: --

第72期名人戦七番勝負第一局 最強の矛対最強の盾  

桜がはらはらと舞い散る中、将棋界の春の訪れを告げる名人戦が開幕しました。
今年も4年連続同一カードの森内俊之竜王名人vs羽生善治三冠です。
羽生さんは7年連続の名人戦登場で3年連続の挑戦となります。


(2年前の第70期名人戦PV)

森内竜王名人は昨年末竜王も奪取して現在棋界の序列一位。そして羽生さんは三冠を保持して序列二位。
トップツーによるまさにこれぞ名人戦という風情です。

お二人の名人戦は通算9回目で、昭和のゴールデンカード大山升田戦に並ぶ記録とのこと。
前夜祭ではそれを受けて
「レジェンドになるような将棋を指したい」と羽生さんがコメントされました。

第一局は例年通り、ホテル椿山荘東京にて。
椿山荘はもとは山縣有朋の邸宅だった場所で、都心にありながら喧騒から隔たれた美しい庭園に囲まれています。
その敷地内にある料亭の一室が本局の対局室。
現地大盤解説会も同ホテルの一角で行われ、私は2日目の解説会に参加しました。

写真
写真2


振り駒にて先手は森内竜王名人と決まり、注目の初手は▲2六歩。
羽生三冠が二手目に△8四歩と応じて戦型は相掛かりになりました。

今回副立ち会いの阿久津主税八段によると
「相掛かりは昔からあるが常に三番手くらいの位置にある戦型で、
定跡が整備されていない」とのこと。
そのため前夜祭などでは矢倉や角替わりを予想する声が多かったのですが
お二人の名人戦だと相掛かりは因縁の戦型でもあります。

羽生さんが永世名人資格を得た2008年の第66期名人戦では
100年に一度の大逆転と言われた第三局の戦型が森内名人先手の相掛かりでした。
第五局でも同じ戦型でそちらは森内名人の圧勝、
続く第六局でも羽生さん先手の相掛かりでこれに勝った羽生さんは十九世名人資格の獲得となりました。
そして去年の第一局第二局と、通称”往復ビンタ”を森内名人に食らったのも相掛かり。

というわけで羽生ファンにとっては
どちらかというと苦い記憶が新しい戦型ということになりますが、
さてどうなるでしょうか…。

お互い飛車先の歩を交換してしばらくは相掛かりの定跡をたどります。
後手が9筋の端を打診したのに対して先手がそれを受けず、足早に右銀を前線に繰り出したのを見て
後手がさらに端を突き越して早くも未知の世界へ突入しました。
そこから後手が△5二玉と中住まいに構えたのを見て先手が自ら角道を止めたところから
この将棋の方向性が大きく動き出しました。

▲6六歩と角道を止めたので後手が△8六歩▲同歩△同飛に▲8七歩としたら
△7六飛と横歩を取る狙いを見せたのに対して
歩を取らせまいと▲7七金と先手が金を上がりました。
通常ここに金を上がるのは悪い形とされているので
それで満足して後手は飛車を引き上げる手もあるところでしたが
羽生さんは敢然と激しい順へ踏み込んで行きました。

飛車にあたっている▲7七金を無視して角取りの△8六歩。
こうなるともはや飛車角交換が避けられません。
その後はしばしの必然手順ののち、落ち着いてみると
後手は手損していて自陣はほとんど手数が進んでいない代わりにバランスがとれた低い陣形で
大駒は角が2枚で1枚は手持ち。
先手は金銀が前に繰り出して盛り上がってはいるがバラバラで自陣飛車が2枚いるという、
なんとも異様な見たこともない将棋に…。
後手陣は進展性はないけどコンパクトということもできるし、
先手は金銀は前に出てるけどバラバラでまとめ辛いとも言える。
飛車2枚と角2枚だったら飛車のほうが若干価値が高いけど2枚とも自陣にいるうえに
「序盤は飛車より角」という格言があるとおり
序盤のうちは角のほうが活躍しやすかったりするので、単純な損得が当てはまらない部分も。
ただし、ゆっくりとした展開で長引いて先手が陣形をまとめていくことができれば
飛車の価値の分先手が良くなるだろう、という大方の見通しでした。

やはりというか、後手が攻勢先手が守勢というお互いの棋風に忠実な展開となりました。
最強の矛対最強の盾の戦いです。
去年までは最強の盾の前に涙を呑んできた羽生ファンとしては何とも言い難い気分でした。
売られたケンカは別に買わなくてもいいのに、というのがこの時の私の正直な気持ち…

ただし、この序盤からの大乱戦は2011年にお二人で類似の将棋※を指していたとのこと。
(※2011年度の王将リーグでの森内羽生戦、結果は後手勝ち)
端の関係や銀の位置が本局とは違うそうですが、その違いがどう影響するか…
というのがお二人の間での無言の対話だったようです。
私がファンになる前なのでこれは知りませんでした。

先手陣の金銀はバラバラで、この陣形を角の打ち込みの隙を作らずにまとめるのはかなりの離れ業に思われましたが
そこは鉄板流の森内竜王名人が細心の注意を払ってじわじわと陣形をまとめにかかります。
後手はそうはさせまいと仕掛けて動いて先手陣を再びバラバラにしつつ
攻撃態勢を整えていくという、いつ果てるともしれない中盤が続きました。
2日目夕方くらいまで、木村一基八段永瀬拓矢六段千田翔太四段ら受けを得意とする棋士は「先手持ち」
渡辺明二冠を含めその他攻めを得意とする棋士は「後手持ち」というふうに
形勢不明な状態が延々と続いていましたが、
8筋7筋の攻防を経て次第に後手の攻めがつながっていく展開になりました。

しかしお互いずっと神経を使い続ける緻密な読みが必要な将棋で
おふたりとも夕休あけで軽食をとったばかりなはずなのに
お盆の上に用意されているお菓子にちょくちょく手をつけられていて
それだけエネルギーを激しく消費されているのだな、というのがわかりました。
こちらも見ているだけなのに喉が渇いて仕方がありません。

どうやら後手がやれていると評価が下された局面で
羽生さんが4筋から駒を清算し角2枚も切って寄せにいき、
これは決まったか?と思われましたが、森内竜王名人も鋼鉄の受けでぎりぎり土俵際でしのぎ続けました。
そこから後手勝ち?いやまだ難しい、いやでもやはり後手が残しているか?
でも頓死筋も、いやいややはり後手が残していそうだ、という
激戦が60手以上にもわたって続き、午後21時54分、178手にて森内竜王名人の投了。
長い長い戦いにようやく決着がつきました。

序盤に飛車角交換して先手が飛車二枚、後手が角二枚だったはずが
最後にはまるっきり入れ替わって先手が角二枚、後手が飛車二枚になっていました。

終始わけのわからない将棋で、解説の先生がたも大変そうでしたが見ているこちらもヘトヘトになりました。
ぐったり疲れてしまい、翌日本当にしんどかったです。仕事で徹夜明けの時よりよっぽどしんどかった。
ただ見ているだけでこんななのに、指しているお二人はいったい本当に人間なのだろうかと思ってしまいます。

頂点のお二人によるこれぞ名人戦という感じの
秘術を尽くしてお互いの持ち味を存分に出しあった素晴らしい将棋でした。
ほんの少しでもどちらかにミスが出れば一気に大差がついてしまう力戦だったにもかかわらず
ずっと均衡を保ち続けて170手を超える大熱戦というのは、
このお二人だからこそ成立した将棋だったと言えるのではないでしょうか。
年度始めだというのにいきなり今年度名局賞候補という言葉も出るほどです。

最後の最後、羽生さんが森内竜王名人の反撃を受け切って玉が固くなり羽生勝勢が確実になったあたりで
その時大盤解説を担当されていた村山慈明七段長岡裕也五段
お二人とも(別々に)羽生さんと研究会をしていることから
「羽生さんと研究会で指しててもよくこういう展開になる。
羽生さんの攻めは細くて切れそうでも切れない。
そしてこちらから攻めると何故か羽生さんの玉がいつの間にか固くなっていて、
あとはこちらの気持ちが折れるかどうかという展開になってしまう。研究会でも相当勝てない。」
と口をそろえて語ってらっしゃいました。

昨年までの3度の名人戦で初戦を制していたのはすべて森内竜王名人でした。
お二人の対戦では先手番勝率が7割を超えるというなかで初戦の後手番を勝ち切ったというのは
羽生さんにとってはとてもとても大きな白星だと思います。

しかし、名人戦はどちらかが4つ勝つまで終わりません。
33年間ライバル関係にある、最強最高の難敵・森内竜王名人と羽生三冠の次局以降の戦いも本当に楽しみです(^^)

第72期名人戦七番勝負


スポンサーサイト

category: 将棋

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://greeny.blog7.fc2.com/tb.php/404-8acadd83
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。