階段下のがらくた部屋

ハリー・ポッターの感想・考察から日々の雑事まで。だったのが色々あって将棋とか。

第9回朝日杯将棋オープン戦 準決勝・決勝 「決勝」  

(長くなったので準決勝と決勝とで分けました。準決勝の記事はこちらです

決勝に勝ち上がったのは羽生名人と森内九段。
私が一番見たいと思っていた組み合わせでした!!( ´ ▽ ` )

お二人が新宿の小田急百貨店でのこども将棋大会で出会ってから35年。
今もなお将棋界のトップとしてしのぎを削り合う、永世名人有資格者同士の戦い…!
その熱い戦いを生で、間近で観戦できるなんて、こんな夢のような出来事があっていいのでしょうか!?
興奮収まらないままの気分を「楽しみすぎて爆発しそう」と表現したら、
「そんなにも何かを楽しみにする気持ち、いつ以来ないだろう。うらやましい」と言われました。

午後の決勝は振り駒の結果、またしても羽生名人が後手。
14:30に対局がスタートしました。

▲森内九段 - △羽生名人

▲7六歩△8四歩▲6八銀から矢倉の進行に。
矢倉といえば以前は先手矢倉といえばこれ、という定番だった▲4六銀▲三七桂型に後手が△4五歩で銀を追い返す指し方が有力とされて、最近は先手が早囲いにしたりと色々工夫されているところ。
森内九段は矢倉のスペシャリスト。今回はどんな将棋になるのかな?

以下は対局観戦しながら私が思っていたことです。

△7四歩~△5三銀右!
→これは!△5三銀右急戦矢倉!!!

最近ではほとんど見かけなかった作戦です。
▲4六銀▲三七桂型が猛威を振るっていた頃に、後手が対抗策としてこの作戦を用いていたような印象を持ってます。

事前対策が万全なことで定評がある森内九段。
早指し戦では相手の用意の作戦にハマってしまうとそれだけで勝負がついてしまう危険もあって、羽生名人がそれを外しに来たのかなー。

……

▲2五歩△5四銀
→△5四銀って、見たことないなあ…

……

▲1五歩△3三銀
→急戦矢倉では後手が飛車先の歩交換を防がないのはよく見るけども、飛車先の歩を交換させてから銀上がるのかー。なんでだろう。

……

▲1七桂△2四銀
→角のにらみが利いてて3六の歩を動かせないから端から桂を。で、後手はそれを先受けして銀を上がったと。

って、森内九段がここでめっちゃ考えてる。持ち時間40分なのにもう20分以上ここで考えてません!?長い。まだ序盤なのになんでだろう。観戦してるお客さんたくさんだけど、でもとても静か。

これだけの人数がいるのに、誰も声も音も発しないで、凝縮した緊張感の中で全員が森内九段の次の一手に傾注している。

▲5九飛
→2四銀と端を受けさせたから中央へってことなのかあ。

……

△5五歩
→羽生名人もお返し長考で9筋の端を突き合ってから。うーん、せっかく切った5筋の歩を打たされて、しかも歩切れになってしまって、後手面白くなさそうな…。角道も止まっちゃったし。

……

△5一角▲5七銀
→後手の角使いにくそう。
働きの弱かった先手の右銀は中央から捌けそうな予感…。

銀交換になって懸案だったと思われる先手の右銀は捌けたところで本格的な戦いが開始。

……

△3八銀!
→羽生ゾーン!羽生ゾーン!! (※正確?には2三のあたりに駒を打つことをこう言う)
そんなところに打ってしまって大丈夫なんですか!?
その銀は遊ばないのですか!?!?

……

△5七歩
→私も打ちそうな歩だから、不安…。攻めが重そうな??

▲7七角~▲5五金~△3三角~▲6五金
→コビン恐い!コビン恐い!!(>_<;; 玉頭も危ないし、角にコビン狙われたまま桂馬まで跳んできたらと思うと…
って、△6五金!自玉は大丈夫なんですか!?!?!?

……

▲4一銀△6九銀
→ぎゃー、矢倉崩しの定番、銀ひっかけきたー!って後手もひっかけたー!!!どっちが危ないの???

……

▲4四角成
→またイヤなところに馬がっ(>_<)

△4一飛
→銀は取れたけど、王様狭くなったような?

▲2四歩~
→ですよねー!馬に張り付かれたまま玉頭攻めこわいよー…受かるんですかこれ!?なんか無理そうに見える(>_<)
でも羽生名人の表情を見ると、勝つときの雰囲気がある…。
先手の攻めは受かってるということですか!?
どきどきで喉の渇きが半端ないです(観客は飲食禁止)

……

△6八角
→あっ! これは、受かる??というか攻防に利いた馬ができますね…!それでもめちゃめちゃ恐いけど…!

……

▲6六歩
→おっとこれは!ここで受けるのではおかしい、です、よ、ね??

……

△2五歩
→後手もいったん自玉を受けて、と。同桂同桂2六歩が恐いけど…その瞬間になにか…あるのかな…馬がいるから寄せがある?

……

△8七歩~△6六金
→うおー。歩があたってた金を押し売り!これは…!

……

△8九銀

120手にて後手羽生名人の勝ち!
これで朝日杯は3年連続5回目の優勝です。
やったー!!!(*´▽`*)

盤側で観戦している分には(私の棋力では)どっちが勝っているのか全然わからなくて、
△6八角打たれるまでは後手受からないんじゃないかと生きた心地がしないでいました。
もう、ずっと立ったままで足が痛いのも忘れるほどの、激しい展開で…
2時間以上にわたるお二人の力のこもった熱戦・名局に、終局してしばらくは呆然としてしまいました。

去年おととしの羽生渡辺戦もゴールデンカードでしたが、羽生森内ももうひとつのゴールデンカード。
長ーい付き合いのお二人同士、羽生渡辺戦とは違った独特の緊張感と同時に、
相手に対する安心感みたいなものも感じられて本当に貴重な経験でした。
こんな素晴らしい将棋を間近で観戦することができて、生きててよかった…と心底思いました。

棋士のみなさま、関係者のみなさま、そして一緒に観戦していたファンのみなさま、ありがとうございました( ´▽` )ノ


関連記事
第9回朝日杯将棋オープン戦中継(棋譜中継と当日生中継した映像が配信されています。)
ライバル対決、伝わる緊迫感 羽生名人、森内九段下し3連覇 第9回朝日杯将棋オープン戦


羽生名人「3連覇うれしい」 朝日杯将棋ダイジェスト

category: 将棋

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第9回朝日杯将棋オープン戦 準決勝・決勝 「準決勝」  

(長くなったので準決勝と決勝とで分けました。決勝の記事はこちらです


今年も朝日杯将棋オープン戦公開対局の季節を迎えました。
将棋ファンになって以来、毎回羽生名人が準決勝に進出されているので、私も今回で4回目の参加です。

[ 過去のレポート記事 ]
第8回朝日杯 決勝 
第8回朝日杯 準決勝 
第7回朝日杯
第6回朝日杯

[ 朝日杯の特徴 ]
・持ち時間40分(チェスクロック使用)+切れたら1手60秒未満の秒読み
・準決勝、決勝が公開対局
・当日解説(現地会場)付き生中継がテレ朝チャンネル2(CS)とニコ生で放送され、後日録画映像が朝日新聞のwebサイトで公開される
・web上で棋譜中継が見られる
・もちろん日本将棋連盟モバイルでも中継が見られる

という、ファンにはたまらない、とても楽しみの多い棋戦なのです。
しかも、公開対局と一言で言いますけどね。
すごく近いんですよ!!!
2~3メートルの距離で対局観戦できるので、駒音はもちろん対局者のため息まで聴こえてしまうのです…!

そんな年に一度のお楽しみ。
今年は2月13日(土)に有楽町朝日ホールにて開催されました。


[ ベスト4に勝ち上がったメンバー ]
羽生善治名人(45)
森内俊之九段(45)
村山慈明七段(31)
戸辺誠六段(29)

[ 準決勝の組み合わせ ](リンク先は棋譜中継)
羽生名人 - 村山七段
森内九段 - 戸辺六段

どちらも永世名人有資格者に30前後の棋士が挑むカタチとなりました。
私の朝日杯観戦スタイルは明快です。
羽生名人の対局は対局場で観戦、そうでなければ大盤解説会。これです。
山崎隆之八段らによる大盤解説会も大変魅力的なのですが、
なにしろこんなに間近に対局を観戦できる機会はここをおいて他にありません。
対局会場はもちろん無言で物音も衣擦れしかしないような状況で、当然解説は一切聞くことができません。
でも、生で観戦して、対局者と同じ空間で同じ時を過ごすのは、大変濃密で贅沢な時間なのです。
普段は記録係と観戦記者にしか許されない盤側観戦…!


入場したのち、まず対局場に入って観戦場所の確保をします。
が、朝日杯は先手後手によって対局者の座る席が決まります。
先手が向かって右、後手が向かって左。奥に置かれる大盤の先手後手と合わせた格好です。
入場した時点では先手後手はわからないので、いい位置を確保したいと思ったら頼るのは己の勘です。
後手かな?と、向かって右側の位置を確保して、見事当てました。やったね。

▲村山七段 - △羽生名人

先手村山七段、後手羽生名人。
これまでの対戦成績は羽生名人から見て3戦3勝。

公式戦では対羽生戦が全敗の村山七段ではありますが、お二人は一緒に研究会で将棋を指す間柄。
研究会をしていて一度も勝ったことがないとはちょっと考えられません。
やはり羽生名人と研究会(VS)をしている長岡裕也五段が「研究会での対羽生勝率は1~2割」ということらしいですが、
村山七段ははたしてどうなのでしょう。

初手▲2六歩から角換わり腰掛銀へと進みました。
最近プロ間でさかんに指されている戦法で、「端歩をどうするのか」が大変ホットな最前線での駆け引きとなっています。
端の歩を突くか受けるか突かないか受けないかで、いったい何がそんなに違うのか
正直なところ私程度ではさっぱりわからないのですが、それによって確かに駆け引きが行われているのです。
羽生名人は後手ではずっと9筋の端歩は突かれたら受けていたのですが、
ここで(たぶん)初めて9筋の端を保留する形に!!
そして△7四歩~△7三桂!
9筋の歩を受ける1手を省略して、後手から先攻しようという作戦です。(そのくらいはわかる)
ただ、今までだってムダに端の歩を受けていたわけではないので、メリットだけでもないはず。
そこのところがどうなるのか。
こうやって定跡とは進化していくのですね。

以下は対局観戦しながら私が思っていたことです。


△6五歩
→そしてついに後手から仕掛けたー!とりあえず羽生名人が攻めている方が観ていても楽しい。

▲同歩△1四歩
→仕掛けてから端!? もし先手が受けなかったら9筋を保留した分の1手の速さがなくなっちゃう。

▲4五歩
→逆に先手から攻めの手。ですよね。そうですよね。

……

△4四銀
→ぶつかったまま放置されているとむずむずするけど、3筋の歩は先手も後手もお互い取れないんだな。
先手が取ったら後手は△3六歩、後手が取ったら▲2四歩同歩同飛で十字飛車。

▲1六歩
→あれ、ここで受けるんだ!?この時間差はなんなのだろう。でもこれならやっぱり後手が先攻できるのでは。

△6五桂
→きたー

……

△7三角▲5九角
→飛車に狙いをつけている後手の角に対して、先手の角は受け一方。しかも壁になっちゃってる。
この交換は後手が得したでしょ!羽生名人有利なんじゃないかな??

▲1五歩
→玉頭から攻めかかられているのに端は間に合うのだろうか。

1筋での応接のあとは中央で銀が交換になって、

▲6五銀△8七歩成
→銀交換後に先手が桂得して、ここで歩成り??
…(30秒経過)…あっ!!!!十字飛車か!!!!!!!

△6五飛
→これで▲桂△銀の交換で後手ちょっと駒得。

……

▲2二歩
→この歩イヤだなあ。金でも玉でも取りたくないけど、取らないのはもっとマズい。どっちで取るんだろう。

△同玉
→端に近づいちゃって怖いなあ。大丈夫なのかなあ。

……

△6八歩
→なんだろうこれは。同金とされたら壁が解消されちゃうけど。

▲1二歩成~△同玉
→こう見ると端からの攻めは恐くないんだな。後手玉は右にいくらでも逃げられそう。

△4六飛~△1六飛~△3六飛
→こんなに真ん中を飛車がびゅんびゅん動き回る角換わりの将棋見たことない。
先手は自陣にフタしちゃってものすごく窮屈そうだ。タダでさえ壁形でツラそうだったのに、一層ツラそう。
これは羽生名人がだいぶいいでしょ!!

……

▲2四桂△2七歩
→金取りを無視して飛車を抑え込む2七歩!これは気持ちいい。先手の大駒を2枚とも抑え込んで、駒の働きがまるで大差です。これは優勢なはず。
どうやって決めるのかなー。

……

△8八歩
→うおーーー堅実。先手はロクな逃げ場もないし間に合いそうな攻め手もないし、これで十分なのか。

……

△4六桂~△4七銀
→なるほどー!!!

108手にて羽生名人の勝ち。
一方的に攻め倒したように思えましたが、実際のところどうだったのでしょう。
これで3年連続決勝進出です( ´▽` )



(長くなったので準決勝と決勝とで分けました。決勝の記事はこちらです


category: 将棋

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Yoshiharu Habu the Shogi legend in Switzerland  

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

さて、あいさつもそこそこに本題へ。
ここ数年恒例になっている、羽生名人の年末年始欧州チェス行脚、今回はスイスです。

12/26〜30 チューリヒクリスマスオープン
1/1〜5 バーゼルチェスフェスティバル
(※ドイツ語)

現地スイスの新聞Tages Woche紙に羽生名人の記事が掲載されましたので、
ドイツ語→(google翻訳)→英語→日本語と訳したものを載せます。

私の英語力はあくまでハリポタを全巻原書で読める程度、ですので
まあざっとこんな感じのことが書かれているのだなと思っていただければ。
より正確な訳のご指摘など歓迎いたします。

※コメントで指摘をいただき、それをもとに修正しました。ご指摘ありがとうございます!(20161/6)


文中(※)で書かれている箇所は訳注です。

掲載元:
Yoshiharu Habu – die unerkannte Legende in Riehen - Tages Woche

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【羽生善治 - 知られざるレジェンド、リーエンに】

2016.1.4 10:46

日本のレジェンドである。
羽生善治はリーエンで開催中のバーゼルチェスフェスティバルでチェスを満喫中だ。
将棋とチェス、どちらがより難しいのか。インタビューを交えてお届けする。
(記事:Hartmut Metz)

[ 写真 ]
あまり芳しくなさそうな様子の羽生善治。リーエンにて日本人はArkadij Naiditschに敗れた。(写真:Hartmut Metz)


「とても勉強になりました。非常に貴重な経験でした。」羽生善治は静かにそう答えた。
人当たりの良さそうなその日本人は、バーゼルチェスフェスティバルでの世界的なグランドマスターでトッププレイヤーであるArkadij Naiditschとの対戦を堪能した。「ドローに持ち込めるかなと思っていましたが、結局ダメでした。」羽生はトップボードでの第2ラウンドをそう振り返った。

この謙虚な日本人はクリスマスオープンに参加するため、はるばるチューリヒまでやって来て5/7ポイント獲得し同率7位に入り、その後新年を迎えたリーエンへと移動した。ホテルLandgasthofで日本のトッププレイヤーである45歳の男はリスト14位に入り、現在2/4ポイントで参加者56人のうちの中の上につけている。観衆がステージ上のグランドマスターたちに湧いて注目する中、下のフロアではチェスの兄弟である将棋のレジェンドが人知れず座っていた。羽生善治は将棋におけるマイケル・ジョーダンだ。野球におけるアメリカバスケ界のスーパースターのごとく、眼鏡の好人物は別のスポーツの世界へと遠征してきたのだった。

[ 羽生善治は将棋界のマイケル・ジョーダン ]


最優秀棋士賞受賞20回。日本での記録は伝説だ。
1985年14歳(※15歳)、所沢出身の神童は四段昇段し栄光のプロ入りを果たし、さらなる階段を上った。そして19歳で最初のタイトルを獲得し、それ以来四半世紀にわたり常に1冠以上のタイトルを保持している。(※正確には90年11月26日〜91年3月18日は無冠の前竜王だった)それだけではない。二女(16歳と18歳)の父親は、現在まで唯一無二である七冠制覇を成し遂げたのだ!通算獲得タイトル数は孤高の93期(※94期)にのぼる。

「チェスと同じように将棋でも20〜30代が指し盛りで、40代では厳しくなってきます。」だが羽生は現在もなお毎年約1億円の賞金を獲得している。
1996年に東京で女優・歌手の畠田理恵と結婚し、2014年度には945,000フラン(※11,499万円)の稼ぎをあげている。加えて、講演料や定跡書など数えきれないほどの出版物による印税収入もある。
バーゼルチェスフェステバルの優勝者には火曜の第7ラウンドを終えれば賞金2,500スイスフラン(※約30万円)が与えられるが、彼にとってはポケットマネーに過ぎない額だ。

[ 写真 ]
羽生は将棋ではあっという間に100万ドルを稼ぎ出す。(写真:Hartmut Metz)

リーエンに移動したのも、「考えるのが好きなんです。新たな発見もありますし」と語る九段の男の言葉は時に哲学的だ。
自国でチェスをプレイする機会はほとんどなく、日本におけるチェスの存在は盆栽のようにいまだ小さい。
「約1,000万の将棋人口があって、そのうち10万人ほどがアクティブプレーヤーですが、チェスの大会はほとんどありません。なので去年と一昨年も渡欧して2つの大会に参加しました。」と羽生。
そのような状況にも関わらず、将棋のレジェンドがチェスで見せる強さは信じがたいほどだ。国際レイティングは約2400、これは国際チェス連盟(FIDE)が与えるうちで2番目に高い称号であるインターナショナル・マスター(IM)相当の実力だ。

この気さくで友好的なスターがチェスを学んだのは25歳だったという事実は、彼の才能をより浮き彫りにするだろう——今日のトッププレーヤーたち、世界チャンピオンのマグヌス・カールセン(ノルウェー)などが現在その年齢であり、彼がグランドマスターになってからも10年以上が経っている。
西洋のレジェンドたちを引き合いに出された羽生は微笑んだ。彼はアメリカのボビー・フィッシャーを一番に挙げる。世界チャンピオンであったフィッシャーが1972年に著した本の中に新しい64マスの世界を見たからだという。

[ 映画のボビー・フィッシャー:トビー・マグワイヤ演じる精神を病んだ天才としてのチェス・レジェンド—TagesWoche紙の8ポイント映画レビュー ]


本業と趣味の2つのゲームを混同してしまうリスクを、彼は意に介していない。「同じ日に両方やるのは無理ですが、そうでなければ」と羽生は応じた。
羽生が160人のプロ棋士の中で30年もの間、凋落の危機に瀕することもなくその地位を維持しているのに、チェスは貢献しているのかもしれない。
貴重なプロの座を若い才能に与えるため、老練の高段者、すなわち勝ち星から遠ざかった者は強制的に引退させられる。

チェスと将棋、2つの近縁のゲームは羽生に相乗効果をもたらしているようだ。「チェスをやっていて学んだことは、手を渡すこと、です。」将棋は玉将を詰ますことでのみゲームが終わるため、終盤に向けてより速度を増し激しくなっていく。一方のチェスは、バーゼルのトーナメントでもそうであるように、対戦相手の狙いを見極めるための穏やかな手が有効手になることも多い。「チェスを実際にやってみるまでは、将棋と似たようなゲームだと思っていました。」将棋ではビショップ(※角)はナイト(※桂馬)よりもはるかに強い駒だ、と羽生は両者に共通する駒を比較した。

コンピュータソフトも台頭してきているが、もう長らく人間に勝ち目のなくなったチェスほどではない。「アンチ・コンピュータ戦略をよく研究すればまだ将棋は対抗できます。詰将棋と呼ばれるプロブレムに関してはすでにコンピュータのほうが強い。5年前に初めて将棋ソフトがプロ棋士を負かしました。現在は五分というところでしょうか」今や膨大な定跡データベースが将棋でも蓄積されてきているが、それでも電脳が人間を圧倒するにはまだ至っていないと羽生は語る。その一方で羽生は将棋をゲームや頭脳スポーツというよりも、日本の伝統文化の一部であるとみなしている。どちらが「複雑」か、とは彼は答えなかった。

レジェンドが旧時代の遺物と成り果ててその晩節を汚さぬようにと引退を考えることは?それはもしかしたらタイトル通算100期の金字塔を打ち立てた後だろうか?

彼はふたたび透き通るような微笑みを浮かべた。「わかりません。気持ちが続く限りは、と。私はせいぜい1年とか2年先のことしか考えていないんです。自分がいつまで力を保っていけるかどうか、ですかね。」


category: チェス

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第63期王座戦五番勝負閉幕  

第63期王座戦五番勝負が閉幕しました。
通算獲得23期目を目指す羽生善治王座に対するは
今期ついにA級に昇級し各棋戦で八面六臂の活躍を見せる若手実力者の佐藤天彦八段

星取りは羽生王座から見て○●●○○で、3年連続フルセットでの王座防衛となりました。
これで王座戦は4期連続通算23期目、タイトル通算は94期。


ずいぶん長いこと羽生世代が牛耳っていた棋界に若手の躍進著しい近年
今年はそれがさらに顕著になりました。
各棋戦で上位にあがってくる顔ぶれに明らかに変化があります。

春からのタイトル戦の挑戦者も

名人戦:行方尚史八段(41歳)
棋聖戦:豊島将之七段(25歳)
王位戦:広瀬章人八段(28歳)
王座戦:佐藤天彦八段(27歳)

という面々。
タイトル戦以外の羽生名人の対局でも、10月2日の佐藤康光九段との対戦が今期初の対羽生世代戦で
それ以外のほとんどが20代の若手との戦いでした。

名人戦、棋聖戦、王位戦とそれぞれを1敗ずつで乗り切って迎えた王座戦。
タイトル初挑戦の佐藤天八段はここ1年で一番勝っている棋士と言って間違いないでしょう。


ただ、私は今期の王座戦、とても楽しみだったんです。
開幕前に王座戦の話題になって「楽しみです!」と言ったら「余裕だねえ~」と驚かれたり、
1勝2敗に追い込まれてからも妙に楽観的でもありました。
不思議と今期は防衛されるだろうという、確信というよりは、そう「認識していた」。

佐藤天八段がものすごく強くてなおかつ勢いに乗って勝ちまくっているのは
もちろん私もわかっています。

でも、それ自体は全然関係ないというか…
恐さよりもわくわく感のほうが勝っていた感じです。

それはなにから来るのかと言うと、羽生さん自身が楽しみにしているんじゃないかと感じたからです。

ひとつには、先に書いたようにタイトル戦の挑戦者の顔ぶれが近年変化してきていて、佐藤八段が満を持しての初挑戦であること。
誰もが新しい時代の息吹を感じずにはいられません。
迎え撃つ側の羽生さんもそれはきっと同じでしょう。

もうひとつには、羽生さんの好きな戦法である横歩取りで佐藤天八段が圧倒的に勝ちまくっていること。

佐藤天八段は特に後手番での横歩取りがドル箱戦法となっていて、
2015年になってからは10戦10勝(王座戦開幕まで)の負けなし!!
通算でも8割を超える勝率と、ちょっと尋常じゃなさすぎる感が漂います。

ただ、羽生王座も横歩取りは子供のころからの得意戦法で、
オールラウンダーながら「好きな戦法は?」という質問にはほぼ必ず「横歩取り」と答えています。


今までの同世代とは違う新たに台頭しつつある若い世代の旗手が、自分の一番好きな戦法を一番の武器に挑戦の名乗りをあげたのです。
これを楽しみにしていないはずがない。


羽生さんはチェスを趣味にしていて、(珍しく)まとまった休みがあると海外の大会に積極的に参加されますが
ただでさえ忙しいのに将棋と似たようなチェスを指す理由を


「ハードだから」
「海外に行く機会がなければ、こんなにチェスをやってなかった」
「強い人と対戦するのが好き」

将棋ペンクラブログ「羽生善治名人「体力は森内君にかないませんよ」」より


と答えています。

つまり、将棋でもチェス(国内)でも自分と同じくらい強い人はいるけど、チェスは海外に行けば自分より圧倒的に強い人と戦える。
それが楽しいのだと。


今回の王座戦は、佐藤天八段が強いからこそ、横歩取りでガチンコ勝負をするのを羽生さんは心から楽しみにしていたんじゃないかなあ…と。
もしかしたらタイトル初挑戦の佐藤天八段以上にわくわくしていたかもしれない。
勝手な想像ですが、そう思っています。

そして私は羽生さんがわくわくして指す将棋を観るのが、心の底から嬉しく楽しいのです。


category: 将棋

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金沢将棋レベル100制覇。  

2012年の3月半ばころだったか、将棋に興味を持ち始めて
最初は3月のライオンの2巻で二階堂くんが将棋のルールを説明しているページを見ながら指し始めた私。

最初は二枚落ち下手でも勝てなかったiPhoneアプリ(Androidもある)の金沢将棋レベル100のレベル1に
初めて平手で勝てたのが2012年4月8日でした。

※Flash Playerのインストールされていない環境では棋譜再生画面は見られません。
その場合は棋譜データをどうぞ。

■2012年4月8日先手:もりやん 後手:金沢将棋Lv1
棋譜データ

ご覧のとおり、むちゃくちゃです。
ここから1年間でレベル25まで進めたので
「じゃあ単純計算で4年でレベル100までいけるかな?」と思ったのでした。

そして2015年10月17日、レベル1に勝ってから3年半後、とうとうレベル100に勝てました!

写真 2015-10-18 0 23 35


やった~~~~!
コンスタントに金沢将棋と指していたわけではなく、
行き詰まったり飽きたりして将棋ウォーズばっかりな時期もあり、
断続的に、という感じでした。
4年でレベル100というのも、最初の1年で25までいったからというだけで
ゆるーい目標みたいなものっていうか。

それが秋になって再開して、また行き詰るまでと思ってたら
レベル70台から80代に、そしてとうとう90台に…となってまして。

というわけで対レベル100の棋譜も掲載します。
上のレベル1との将棋(?)を見ると、大人になっても人って成長できるんだなあとじんわりきます。
「将棋を指すなんて無理」と思っている方、ぜひ私のレベル1の棋譜を見てみてください。
きっと「自分もできるかも!」と思っていただけると思います(笑)


■2015年10月17日 先手:もりやん vs 後手:金沢将棋Lv100棋譜データ
寄せあり!と踏み込んだあと気持ちよく寄せられました。

■2015年10月17日 先手:金沢将棋Lv100 vs 後手:もりやん棋譜データ
色々と反省点があるものの、一度で勝てたのはびっくりでした。これで金沢将棋レベル100制覇!!

とはいえ、反省点が多かったので、もう一度。

■2015年10月18日 先手:金沢将棋Lv100 vs 後手:もりやん棋譜データ
これは文句なく快勝。

見ていただくとわかると思うのですが金沢将棋特有の指し手というのがあって
それに私が慣れているので、人相手ではこういう展開にはならないとは思うのですが、
それでも3年半金沢将棋にたくさん鍛えてもらいました。

去年だったか金沢将棋2(iphone版/Android版もリリースされました。
こちらはレベル300まであるそうなのですが、さすがにしばらくはもういいやという気分です(笑)

次の目標は…何にしましょうかね~

category: 自分の将棋

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第86期棋聖戦5番勝負閉幕  

以下の記事を7/30に書いてそのまま公開し忘れてタイミングを失っていたので今更こっそり公開します。(10/18)



第86期棋聖戦5番勝負が閉幕しました。

前期王座戦に続いて今期の棋聖戦の挑戦者に名乗りを上げた豊島将之七段は以前から若手筆頭との呼び声の高い実力者。
電王戦での大舞台を経て、ここ最近さらに勢いと迫力を増した感がありました。

前期王座戦では羽生善治王座2勝から2つ返されてのフルセットという展開だったので
棋聖戦も競り合うことになるとちょっと…どうかなと少し不安に思っていたところもありましたが
結果的には3勝1敗での防衛、ということになりました。

羽生さんの調子も、名人戦が終わってから徐々に上がってきているように感じています。

が。

決着局となった第4局は衝撃的でした。

相掛かりの乱戦模様で即終盤に入るような展開で、
先手の羽生棋聖が桂得したものの玉形差もあって難しい局面が続いているとう状況から問題の局面が訪れます。

69手目 ▲6三歩

先手の羽生棋聖が唯一の持ち駒である歩を、後手の金の頭に打ちました。
「一歩千金」という格言があるように、歩はとても大切な駒です。
プロの将棋では歩を使った手筋がとても頻繁に出てきますし、1枚の歩があるかどうかが勝負を分けることもあります。
しかも持ち歩が何枚もある場合ならまだしも、たった1枚しかない持ち駒の歩は本当に貴重です。
その、大切な歩を相手の金の頭に打ちました。

70手目 △6一金

持ち時間4時間のうち45分じっくり考えて、豊島七段は金を1マス下に引きました。

この△6一金とされて先手に有効な手がどうも見つからない、と解説されていたところ…

71手目 ▲6二歩成

将棋に詳しくない方でも図を見れば一目瞭然だと思いますが、
この成った歩を先ほど引いた金で取れば盤上は▲6三歩を打つ前の状況とまったく同じになります。
違うのは、羽生棋聖の持ち駒の歩が豊島七段の持ち駒になることだけ。
つまり、タダで歩をあげたのと同じことです。

私もそれはそれはびっくりしましたが、見ているプロ棋士も全員度肝を抜かれたようです。

こちらでわかりやすくまとめられています

棋聖戦第4局、反省し鬼と化した羽生善治棋聖が防衛。直前に打った歩をタダで成り捨てる▲6二歩成!これが羽生マジックか
(将棋ワンストップ・ニュース)

羽生善治棋聖が見せた衝撃の反省力。打った歩を直後に成り捨てる▲6二歩成、感想戦では「まあ、ちょっと恥ずかしいんですけど」
(将棋ワンストップ・ニュース)


ニコ生解説の
鈴木大介八段は「ウソでしょ!?えっウソでしょ??」と動揺を隠さず
棋譜中継のコメントでは


これはなんと! 思わず目を疑う手だ。
羽生の指した▲6二歩成は、直前に指した▲6三歩を完全否定する手。まったくの1歩損、それも貴重な最後の1歩だ。だがそれでも、自身の間違いを認め、反省して成り捨てるしか、この将棋を戦う術がないと判断したのだろう。苦渋の決断に要した時間は27分。


と書かれています。


誰がどう見ても、直前の自分の判断は間違っていましたと間違いを認めた手です。
20年以上第一人者という立場の人が、タイトル戦という大舞台で。
打った歩を成り捨てるのが最善だと冷静に判断して、そして実行できる精神力に衝撃を受けました。


実際には豊島七段は、当然好機と見たのでしょう、成った歩を無視して先手玉に襲い掛かりました。
この気持ちもわかるような気がします。
直前に打った歩を成り捨てるなんていう明らかなミスです。
最大限に咎めたくなりますよね。

しかし、結果的にはここで歩で叩いて玉を釣り上げたのが「攻め急いだ手」だったようで、
ここから形勢の針が先手に傾いていき、99手をもって豊島七段の投了そして羽生棋聖の勝ちとなりました。

この勝利で羽生棋聖は棋聖位連続8期(歴代一位)通算14期、タイトル通算92期と記録を伸ばしました。


並行して行われている第56期王位戦でも広瀬章人八段を挑戦者に迎えて
現在第二局まで終了して羽生さんの2勝0敗です。
続く第63期王座戦でも今度は佐藤天彦八段が挑戦者に決定していて、若手の挑戦を受ける構図が続きます。

若手の将棋をも吸収して力に変え、さらに強くなっているようにすら見える
羽生名人の将棋を観るのが今後も楽しみです( ´▽` )

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第73期名人戦七番勝負  

第73期名人戦七番勝負が閉幕しました。

激戦のA級順位戦を勝ち抜いて41歳にして初の名人挑戦に躍り出た行方尚史八段
羽生善治名人が4勝1敗で降して防衛を決めました。
これで名人通算9期、通算タイトル獲得数は91期と記録を伸ばしました。

私の戦前予想も4勝1敗での防衛だったのですが、内容は予想とは違っていましたね。
第1局は短手数での終局、第2局はねじり合いの末の挑戦者の勝利と一進一退で
結果的にはその後羽生名人の3連勝となったわけですが、3局とも逆転勝利という…

そうそう、予想外と言えば自分自身のことでも予想外のことがありました。

第一局の椿山荘対局は2013年度から2日目の現地大盤解説に行っていて、
今回も行くつもりで有給をとったりして準備していたのですよ。
で、当日になったらなぜか行き先が病院になっていて、そのまま入院という…(苦笑)
第一局はそのまま病院のベッドのうえでぐったりしながら観戦することに。
思わぬ短手数で驚きましたが、(自分の都合ではありますが)ぐったりした中で短時間で快勝してくださって、本当に良かったです。

閑話休題。

第3~5局はいずれも羽生名人の逆転勝ちでした。
3局とも中盤の早い段階で作戦負けになっていて、
素人目にも挑戦者のほうがいいだろうということがうかがえる、苦しい局面が続く展開。
とはいえ、どうもその後の展開を見ると、思ったほどには差が開いてはいない、というのが実情だったようです。

以前から「羽生さんの強さとは?」という問いに棋士たちが「悪くなっても離されないで付いて行く、”間違えたら許しませんよ”と」
という点をあげることが多く、私もなるほどーとは思っていたのですが
それを今回ほど感じたことはありませんでした。

名人戦は持ち時間9時間、中盤の入り口で形勢を損ねてしまうと、そこからずっと苦しい状態で耐え続けなくてはなりません。
しかも離されないで付いて行き、なおかつ「緩い手を指したら許さない」というプレッシャーも与え続ける。
それを延々続け、ひたすら、もしかしたら来ないかもしれないチャンスを待ち続ける。

これは尋常ならざる精神力がないと、絶対にできないことだとつくづく感じました。

延々苦しい局面を考え続け、チャンスが来たときにけして見逃さずにつかみ、
そしていったん有利になったら間違えることなく的確に優位を広げていく。
言葉で言うのは簡単だけど、どうしたらそんなことができるのか…。

しかしそんな将棋を3局続けて見せられて、正直度肝を抜かれる思いがしました。
序盤から良くなって圧勝するよりも、よっぽど凄みを感じます。

相手からしたらたまったものではないでしょうね…。
一度優位に立たれたら追いすがることもできず、
自分が優位に立ってもちょっとでも間違えたらあっという間に抜き去られて、気が付いたら奈落の底。
羽生名人と戦って負けた棋士が「いったいどうしたら勝てるんだろう」と深みにはまってしまうというのも、なんとなくわかるような気がしました。

防衛の喜びもつかの間、6月2日からは豊島将之七段を相手に棋聖戦五番勝負が開幕します。
今ノリに乗っていて、はた目からも自信をもって臨まれているなというのが感じられる挑戦者です。
前期王座戦でも激闘を繰り広げたカードですが、今回はどんな戦いになるのか、とても楽しみです(^^)



【名人戦:羽生が防衛…行方に4勝1敗、通算9期(毎日新聞)】
http://mainichi.jp/feature/news/20150530k0000m040072000c.html

【将棋・羽生名人が防衛 単独3位の名人9期目に(朝日新聞)】
http://www.asahi.com/articles/ASH5V6SQZH5VUCVL028.html

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